情報発信のノウハウ
この記事では、徳島県美波町で地域づくりを行う「日和佐 発心の会」が編み出した情報発信のノウハウをまとめています。
「イベントを開催したい」「会社や団体の情報を知ってほしい」など集客の悩みを持っているなら、ぜひ参考にしてみてください。
【オンライン広告の活用】
最近では多くの人がインターネット(オンライン)で情報を収集するようになりました。そういったことからも集客を考える上でオンライン広告を無視することはできないでしょう。
有名なサイトになればなるほど広告掲載料金も高くなります。だけど、イベントの内容がおもしろかったり、広告のデザイン性が高かったりした場合は「掲載させてください」とお声がけいただけることもあります。
また、「あわカル」や「まいぷれ」・「イベントサーチ」などイベント情報を入力すれば無料で掲載してくれるオンライン広告もあります。
さらに、自治体によってはオンライン広告会社とパートナー契約を結んでいるということも少なくないので、自治体の職員と繋がりのある方は広告を掲載させてもらえないか相談に行ってみるのもいいでしょう。
[徳島のオンライン広告会社]
・徳島観光情報サイト阿波ナビ
・日刊あわわ
・情報とくしま
・なんとPlus
・あわカル
・まいぷれ
・イベントサーチ
【SNSの活用】
SNSでの集客方法を調べるとほぼ9割が「フォロワーの数を増やす」という内容にまとめられています。
だけど、この記事ではフォロワーが少なくてもできるSNSの活用方法をお伝えします。
それはフォロワーがたくさんいる人にお願いして、拡散してもらうことです。
具体的にいうとFacebookの場合だと、
に投稿した内容をシェアしてもらうわけです。
一度「イベントの出店者募集の投稿」をこれらのFacebookページにシェアしていただいた際には、出店の募集が2倍以上増えたということがありました。
SNSは無料でできる集客方法なので利用しない手はないです!!
また情報発信サイトの担当者はinstagramで情報収集をする場合が多いです。
なので、有名な情報発信サイトは相互フォローの関係になっておくといいと思います。
(instagramはビジュアルが重要視されるSNSなので、デザイン性のある広告を発信する必要があることもお忘れなく!)
【チラシ・ポスターの配り方】
大量に印刷したチラシやポスターをどこに配ったり貼りますか?
新聞折り込みだとお金もかかるし、若い人の目に届くか微妙。。。
そんなお悩みをお持ちの方にとっておきの方法があります!!!
公益性のある取り組みを若い層にも告知したい場合は、小中学校にもチラシやポスターを配ってみましょう。
[小中学校へのチラシ・ポスターの配り方]
1.チラシやポスターを配りたい小中学校の自治体(教育委員会)に連絡をして、配布したいチラシと各学校長宛の鏡文をお見せする。
2.許可が取れたら、教育委員会の窓口に行って配布したいチラシやポスターを各学校専用のロッカーに入れます。(自治体によっては配布できるサイズに指定があったりするので、サイズオーバーしてしまった場合は各学校に郵送か、直接配布しに行くことになるのでご注意。)
3.教育委員会の各学校専用のロッカーに担当の学校職員がチラシやポスターを取りに来て、鏡文の内容通りに学校に配布してくれます。
この方法の最大の利点は、SNSや新聞などのメディアでは情報が届きにくい小中学生に情報発信を行える点です。
さらに教育委員会の各学校専用のロッカーにチラシ・ポスターを入れておくだけでその自治体の小中学校全ての生徒に情報が行き渡るわけなので費用対効果も非常に高いです。
【オールドメディアの活用】
時は2022年。未だに言論の王様は新聞だし、「家にテレビがないなんてあり得ない」って人は少なくないでしょう。つまり、オールドメディアといってもその影響力は健在です。
また徳島にはシェア率70%で都道府県別のシェア率で全国3位の「徳島新聞」という、非常に発信力の高いオールドメディアがあります。
さらに大手新聞社も徳島県に支局を持っているので、ローカルな話題であっても取材に来ていただけることもあります。大手新聞社の強みとしてはローカルな内容であったとしても、yahooニュースやTwitterなどで全国的に情報が発信されることです。
新聞社は共同通信や新聞社宛に送られてきたプレスリリースを見て、取材する内容かを吟味して取材にやってきます。つまり取材してもらうためには、活動した成果の社会的な意義がしっかりと伝わるプレスリリースを作ることが重要になってきます。
また取材に来てもらうための配慮も大切です。
例えば「日和佐 発心の会」で開設した「Art Tourism Museum 373 」の取材をお願いした際には、開所式を行うことをプレスリリースに記載しました。
それによって記者が取材に行くための動機が生まれ、記事の内容にも新鮮さや膨らみが生まれます。
いくら魅力的な取り組みを行ったとしても、知ってもらえないことにはその本当の意味や価値も分からないままです。
誰でも自分のやったことを宣伝するというのは恥ずかしい部分はあるとは思いますが、新聞やテレビに取り上げともらうことは効果的な営業になるので活用しない手はないと思います。それに無料で取り上げてもらえるので。。。
【まとめ】
「日和佐 発心の会」の情報発信ノウハウをご紹介しました。
今日ではホームページの作成も無料で簡単にでき、SNSが全盛の時代です。簡単に情報発信ができるからこそ、自分が発信する情報がすぐに埋れてしまうこととも隣り合わせです。
だからこそ様々な情報発信の方法がある中で、どんな人に情報を見てもらいたいかを考え、最適の方法を選択することが一番大切だと思います。
「日和佐 発心の会」の活動について
【日和佐 発心の会】
徳島県海部郡美波町にある四国霊場23番札所・薬王寺の門前町は、大正期に桜が植えられたことに由来し、桜町通りと呼ばれています。
桜町通りはかつて遍路宿や飲食店が立ち並んでいましたが、過疎化や郊外店の進出で次第にお店が減っていきました。
そういった経緯から、2015年4月に桜町通りの活性化に取り組む「日和佐 発心の会」が設立しました。
メンバーは20代から60代までの男女21名で、美波町の地域住民がボランティアとして休日に集まって活動を行います。従来は、生活道路となっていて交通量の多い桜町通りに交通規制をかけて、新年の無病息災を祈願する薬王寺の初会式や毎年恒例の日和佐さくらまつりなどのイベントに合わせて、地元産品や手工芸品を販売する「手作り物の市」を開催し、地域コミュニティーの活性化を進めていました。
また移住者と空き店舗の所有者を仲介することにも積極的に関わり、カフェや宿泊施設の開業へと繋げていきました。「日和佐 発心の会」が発足した2015年から2020年の間、桜町通りでは7店舗のお店が新たにオープンしました。
そういった活動を通し、徐々に桜町通りを訪れる観光客が増え、地域に賑わいが生まれていきました。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響により桜町通りを訪れる観光客は減少し、毎年行なっていたイベントも中止しなければなりませんでした。
そんな中でも会員たちで積極的に話し合いを続け、
・コロナ禍という状況に対応しながら、地域の特徴を掘り起こし観光客や地域の人たちに新しい美波町の魅力を再発見してもらうために活動を行なっていくこと
・「日和佐 発心の会」としても収益を上げて、安定したまちづくり活動を行なっていくこと
という2つの方針で新たに活動を開始しました。
【コロナ禍における地域づくり活動】
- ウミガメマスクの商品開発計画(商品開発・地域の連携・魅力の再発見)
私たちが定期的に行なっている地域の魅力を探すためのまち歩きで、道の駅日和佐の包装紙として使われている町出身の挿絵画家「橋本シャーン」氏が描いたウミガメの絵を発見しました。
コロナ禍でマスクの着用が日常となっていたので、私たちは美波町のシンボルキャラクターでもあるウミガメの絵があしらわれたマスクの商品開発を考えました。「橋本シャーン」氏は2019年に亡くなられたので、まずは親族にウミガメの絵の使用許可を得ることからスタートしました。
使用許可を得てからは、桜町通りにある縫製工場とデザインの検討を重ね商品化しました。
製作したマスクは、薬王寺の厄除御祈祷をして「厄除け御祈祷済ウミガメマスク」として道の駅日和佐や日和佐ウミガメ博物館カレッタで販売しました。
販売当初から売れ行きは好調で、大きな収益源となりました。さらに、地域のお店や縫製工場、寺院と連携して商品価値を高めることは美波町の商品開発における好事例となりました。
桜町通りの入り口周辺に位置する元JAバンクATMの改修を行なって、地域の魅力を発信するギャラリー「Art Tourism Museum 373 」(通称:ATM)を制作しました。
電気工事以外はすべて会員の手作業で行い、ギャラリー内には地域を紹介する動画や地図、観光パンフレットコーナーを設けました。
この施設が完成したことによって、薬王寺の門前町でありながら参拝客の出入りが乏しいという桜町通りの問題が解決へと前進しました。また改修を行なったATMの隣に持ち主の花壇を整備し、その場所は地域コミュニティーを育む場所として機能しています。
「日和佐 発心の会」の活動拠点と、桜町通りの地域活性化のための施設として「美波町門前町再生交流オフィス」を開設しました。
このことにより地域での位置付けが明確になったとともに、建物の土間空間に地域の廃材で作った本棚を設置して地域に開放したライブラリースペースとしました。
2021年度からは桜町通りの入り口に位置するこの場所で電動バイクのレンタルサービスを開始しました。
それによって自然がコンパクトにまとまった地域の魅力を存分に味わうことができ、またコロナ禍であっても安心・安全に美波町を観光するための受け皿ともなっています。さらに薬王寺に偏りがちな観光客を薬王寺の門前町である桜町通りから、その他の観光資源に誘客する効果も期待できます。
4.今後の展望(ストリートファニチャー・店舗の改修・住民による地域づくり)
「日和佐 発心の会」では、今後も桜町通りの活性化を目指しながら地域づくり活動を行います。現在は桜町通りを訪れた人が、屋外で交流や飲食ができるようにお店の軒下などにストリートファニチャーを設置する計画を行っています。
ストリートファニチャーを設置することによって 屋外での飲食が可能となり感染症防止策に繋がり、地域の景観やコミュニティーの活性化の効果も期待できます。
また桜町通りの既存店舗や廃業した店舗の改修作業を行なうという話も出ており、実現に向けて準備を行なっています。これからも地域で生活する人の切実な問題意識や考えに寄り添い、一人一人のある程度やれることを掛け合わせて活動を行なっていこうと考えています。
『マルクス・ガブリエル 欲望の時代を哲学するⅠ.Ⅱ』/丸山俊一+NHK「欲望の時代の哲学」制作班
本日は、「美波町門前町再生交流オフィス」の無人古本屋で販売中の『マルクス・ガブリエル 欲望の時代を哲学するⅠ.Ⅱ』の紹介をします。
この本は、2018年から放送されたNHK番組「欲望の時代の哲学」を書籍化したものです。
著者の「マルクス・ガブリエル」は、1980年ドイツ生まれ。史上最年少(29歳)でボン大学の教授に就任した哲学者です。彼の著作『世界はなぜ存在しないのか』は世界中でベストセラーとなっており、いま世界が最も注目する哲学者です。
『一角獣は存在する。だが、世界は存在しない。』は彼の最も有名な言葉です。
非常に理解し難いですが、「存在」は「意味の場」(fields of sense )において現象するものであり、一角獣は空想・神話という「意味の場」において存在するが、すべてを包括する「世界」は存在しないという意味になります。
このテーゼが意味を持つのは、科学において無批判に「世界」(科学的世界観)が設定されることで、そこで位置付けられない存在が、存在しないこととされてしまう危険を回避できることにあります。
『マルクス・ガブリエル 欲望の時代を哲学するⅡ』では、「一角獣は存在する。だが、世界は存在しない。」という刺激的なテーゼを土台にして、我々の生きる社会の本来的な機能が提示されています。
私たちは、人間のありようには二つの側面があることを理解する必要があります。社会は、生存の再生産ーこれはアメリカ人による進化論的な社会理解ですーではなく、生活であり、生活とは一つの意味の形態のはずなのです。社会とは、単に生存や楽しみの条件を生み出すことではなく、意味ある生活の条件を生み出すことに関わるものです。(p.84)
例えば、物質・科学による一元的な社会の捉え方では食事は単なるタンパク質やカロリーの摂取と考えられ、人間の「美味しい」といった精神的な高揚などは幻想と見做されます。
彼はそのようなダーウィニズム的な考え方から脱することを語り、さらに幸せや生きがいを感じられる「意味ある生活」の条件は本来社会が供給するものだと主張しています。
彼の言葉を借りると、地域が衰退し、歴史や文化が失われていくことは「意味ある生活」の条件が失われることであると感じました。また現在日本が陥っている少子化という現象は「意味ある生活」の基盤である「生存」の再生産が行われていないということになるでしょう。
「日和佐 発心の会」では、そういった社会状況の処方箋となれるように地域づくり活動を行なっています。例えば、2021年2月にオープンした「Art Tourism Museum 373」の改修計画では、建物の外構に持ち主が管理する「コミュニティーガーデン」を設けました。
それによって近隣の景観・美観が向上し、さらに持ち主に地域を訪れた人との「出会い」や「会話」の機会を与えるという効果も果たしています。
この計画によって「意味ある生活」を生み出す場を再配置することで、その意味をより高めていくことが可能なのではないかと感じました。
ちなみに『マルクス・ガブリエル 欲望の時代を哲学するⅠ.Ⅱ』のお値段は500円になります。立ち読みOKですので、お気軽に遊びに来てくださいね!
『文学部の逆襲-人文知が紡ぎ出す「大きな物語」』/波頭亮
本日は、「美波町門前町再生交流オフィス」の無人古本屋で販売中の『文学部の逆襲-人文知が紡ぎ出す「大きな物語」』の紹介をします。
作者の波頭亮さんは愛媛県出身、東京大学経済学部を卒業後マッキンゼーを経て、経営コンサルタントとして独立された戦略系コンサルタントの第一人者です。
その経歴から意外に思われるかもしれませんが、本書では資本主義(新自由主義)に対して警鐘を鳴らしています。
著者によると、今日の日本(経済成長が止まった国)において「市場のメカニズム」の尊重のみで経済政策を行うと富裕層と貧困層の格差がどんどん拡大していき、貧困層が多数生まれ、そうした階層が固定化してしまい、
それによって、一部に集中した資本が政治やメディアを買収し、社会を構成する人々たちの手で国家のあり方を決定するはずの「民主主義」が機能不全に陥ってしまうとのことです。
波頭さんは資本主義と民主主義の危機を乗り越えるために重要なこととして、「テクノロジー」と「物語」という2つのキーワードを挙げています。
テクノロジーは人々の生活や生産行動において何ができるのかを物理的に規定するが、どのような世の中が望ましいか、どのような生活と人生を送りたいのか、何が善で何が悪かといった世の中のあり得べき姿を描き出すのが物語である。(p.142)
「文学部の逆襲」というタイトルには、資本主義と民主主義が機能不全となり、AI技術の浸透がますます加速していくこれからの時代において、「文学部」という人文領域こそが人類を次のステージに動かす主役となっていくだろうという予感が込められています。
この本を読んで、『大きな物語』は人々の感動や共感がもとになって初めて実現していくものだとすると、その実現の基盤には物語自体のクオリティーだけなく、それにひもづいた『小さな活動』の積み重ねが必要となってくると思いました。
そういった考えは地域づくりをするなかで形成されていきました。
例えば、その場所で生活する人に地域の今後のビジョンをぶつけたとしても、その方の考えている異なったビジョンと水掛け論になります。そういった実体験から、まずは自分の考える『大きな物語』に沿った『小さな活動』を行い、実際の現場を通じて共感を生み出していくしかないと考えています。
たとえば、「日和佐 発心の会」には薬王寺の参拝客を桜町通りやその他の観光資源に誘客するというビジョンがあります。
そのビジョンから、2021年2月には薬王寺前の元JAバンクの空き家を改修して桜町通りを紹介するためのギャラリー「Art Tourism Museum 373」(通称:ATM)を開設しました。
また、2021年4月からは桜町通りに訪れた観光客が広域の観光資源にスムーズにアクセスしていただけるように、桜町通りの入り口周辺で電動バイクのレンタル事業を開始しました。
そうやって小さな活動を継続的に起こしていくことで2022年3月には、桜町通りの住民たちで通りに飾り雛を設置する活動などが行われ、少しづつではありますが地域に我々が考えるビジョンが浸透してきたというふうに実感しています。
ちなみに『文学部の逆襲-人文知が紡ぎ出す「大きな物語」』のお値段は500円になります。立ち読みOKですので、お気軽に遊びに来てくださいね!
ATM改修編(後編)
元JAバンクATMの防水工事や電気工事を終え、どういった建物に改修するかを「日和佐 発心の会」の会員で話し合って方針を決めていきました。
ATM改修の目的は薬王寺周辺に地域のお店を紹介するギャラリーを設けることで薬王寺の参拝客を桜町通りに誘導することなので、
・地域を映像で紹介する映像コーナー
・地域を地図で紹介するマップコーナー
・地域のパンフレットを設置するパンフレットコーナー
の3つのコーナーを設けることにしました。
さらに建物周辺の人の流れや、薬王寺温泉との位置関係を考えてそれぞれのコーナーが
どのように配置されると人を内部に誘い込みやすいかを考えました。
計画としては新設の壁で入れ子状の展示空間をつくり、建物内部に入ると3つのコーナーが連続的に繋がった展示に囲われるというものです。
改修の方針が決まったので、実際に作業を開始しました。
まずは壁の下地を設置して、壁の取り付け作業を行いました。
次に壁の塗装作業に取り掛かりましたが、全く綺麗には仕上がらなかったためご実家が建材屋の観光協会の徳永さん(かめたろう)にご指導をいただきました。
写真は徳永さんに粉パテの使い方を教わっているところで、粉パテで壁の凹凸を消した後はペイントローラーで塗料を塗っていきました。
徳永さんのおかげで綺麗に塗装をすることができました。
次にカッティングシートでマップを作ったり、パンフレット置き場を作りました。
内装作業を終えた後は、季節によって表情が変わる場所を目指して外構計画を行なっていきました。
ATMの持ち主はガーデニングが趣味なので倉庫のまわりに御影石を設置して持ち主の花壇のスペースを設けました。
角のない楕円形の輪郭に石を並べることで、持ち主が躓かないようにしました
花壇を設置した後は持ち主のおかげであっという間に花が咲き誇っていて、さらに花壇と歩道の間にかかっていたチェーンも外していただきました。このように自分のものを開くという活動が積極的に行われると地域がよりおもしろくなるんだと感じました。
こうやって4ヶ月に及ぶ作業がようやく終わり、2021年2月11日に開所式を行い正式にATMがオープンしました。
ちなみに建物の名称は元JAバンクのATMだったことから、「Art Tourism Museum 373」(通称:ATM)に決まりました。
オープンしてからは地域の人たちの要望や意見を反映させていくことで、より地域から愛される施設になるように日々建物の設えを更新しています。
ATM改修編 (前編)
元JAバンクATMを正式にお借りすることが決まり、まずは整地作業をして倉庫の設置を行いました。
会員たちで休日に集まって作業を行いました。
倉庫の前には単管で骨組みを組んで看板を設置しました。
これはロバート・ヴェンチューリの「装飾された小屋」という手法を参考にして考案しました。
看板はコーナンPRO南小松島店で購入した「アルミ複合板パンチング」を使用して、軽い印象にしました。
次にATMの改修作業です。
まずは内部のボードと軽鉄下地の撤去を行いました。
ここで問題が発覚…
壁からも天井からも雨が漏っていました(笑)
我々には防水のノウハウが全くなかったので、地域で防水関係のお仕事をしている「ナカバリコート」にお話を伺いにいきました。ナカバリコートには快く防水のノウハウを教えていただき、「地域のためなら」ということで防水塗料までいただきました。
ナカバリコートから教わったノウハウをもとに、はじめに既存防水の撤去作業を行いました。
既存の防水を全て撤去し、次に防水作業を行いました。
こちらは壁の防水作業です。
写真はマスキングテープで養生した後にコーキングガンでパネルの目地を詰めている様子です。目地を詰め終わった後はヘラ(我々はスプーンを使用)でならして、すぐにマスキングテープを剥がしてシールが硬化するのを待ちます。
こちらの写真は屋根の防水作業の様子です。
もともとは「シート防水」だったのですが、新規の屋根防水は素人でも簡単に作業を行える「塗膜防水」で行いました。
防水工事を終えて、雨水の侵入が完全にシャットダウンされたのを確認した後は、内部の鉄骨のサビや汚れを落として塗装作業を行いました。
次に地域の電気設備会社に電気工事をお願いしました。
昔はATMなだけあって電気工事はスムーズに進み、内装作業と外構作業が開始しました。
ATM計画編
「日和佐 発心の会」は、薬王寺の門前町である桜町通りのにぎわいを復活させることを目的に発足した地域づくり団体です。
我々には桜町通りの活性化を考える上で大きな問題意識があります。それは薬王寺は年間100万人以上の参拝客を有しますが、桜町通りにはあまり足を運んでもらえていないということです。
だけど、桜町通りには創業90年以上の製菓屋や古民家を改修してできた新しい飲食店など多様で魅力的なお店がたくさんあります。
そのため我々は薬王寺入り口周辺に地域のお店を紹介するギャラリーを設けることで薬王寺の参拝客を桜町通りに誘導できないかと考えました。
計画を考えるにあたって、まずは薬王寺入り口周辺で空き家を探すことから始めました。
唯一見つけることができた空き家がこちらです。
こちらは元JAバンクのATMとして使われていた建物です。
初めて見たときはめっちゃ小さいという印象でしたが(笑)
よく見ると入り口の半円ポーチはなかなか魅力的だし、薬王寺の参拝客がよく通るエリアに建っていました。
まずは持ち主にお話を伺いに行ってみることに、
持ち主はガーデニングを生きがいとされており、元JAバンクATMはその方の肥料や鉢植えを入れるための倉庫として使っていました。
そのため元JAバンクATMの改修のみではなく、持ち主の倉庫や庭を含めて提案を行って納得してもらえるように交渉を進めました。
我々が行なった提案は主にふたつです。
ひとつ目の案は
棚の倉庫を設置して、その倉庫と元ATMの間にパーゴラの屋根をかける案です。
ふたつ目の案は
ATMと同じくらいの床面積の倉庫を設置して、倉庫の前に看板を建てる案です。
これらのふたつの提案を持ち主の方にお見せして、話し合いを進めていきました。
持ち主がご高齢で「棚の倉庫」に物を入れることは身体的な負担になるという話があり、B案で方針が決まり、正式に建物をお借りすることになりました。