日和佐 発心の会

徳島県海部郡美波町の地域づくり団体です。

『マルクス・ガブリエル 欲望の時代を哲学するⅠ.Ⅱ』/丸山俊一+NHK「欲望の時代の哲学」制作班

マルクス・ガブリエル 欲望の時代を哲学するⅠ.Ⅱ』

 

 


本日は、「美波町門前町再生交流オフィス」の無人古本屋で販売中のマルクス・ガブリエル 欲望の時代を哲学するⅠ.Ⅱ』の紹介をします。

 

この本は、2018年から放送されたNHK番組「欲望の時代の哲学」を書籍化したものです。

 

著者の「マルクス・ガブリエル」は、1980年ドイツ生まれ。史上最年少(29歳)でボン大学の教授に就任した哲学者です。彼の著作『世界はなぜ存在しないのか』は世界中でベストセラーとなっており、いま世界が最も注目する哲学者です。

 

 

『一角獣は存在する。だが、世界は存在しない。』は彼の最も有名な言葉です。

 

 

非常に理解し難いですが、「存在」は「意味の場」(fields of sense )において現象するものであり、一角獣は空想・神話という「意味の場」において存在するが、すべてを包括する「世界」は存在しないという意味になります。

 

このテーゼが意味を持つのは、科学において無批判に「世界」(科学的世界観)が設定されることで、そこで位置付けられない存在が、存在しないこととされてしまう危険を回避できることにあります。

 

 

 

マルクス・ガブリエル 欲望の時代を哲学するⅡ』では、「一角獣は存在する。だが、世界は存在しない。」という刺激的なテーゼを土台にして、我々の生きる社会の本来的な機能が提示されています。

私たちは、人間のありようには二つの側面があることを理解する必要があります。社会は、生存の再生産ーこれはアメリカ人による進化論的な社会理解ですーではなく、生活であり、生活とは一つの意味の形態のはずなのです。社会とは、単に生存や楽しみの条件を生み出すことではなく、意味ある生活の条件を生み出すことに関わるものです。(p.84)

 

 

例えば、物質・科学による一元的な社会の捉え方では食事は単なるタンパク質やカロリーの摂取と考えられ、人間の「美味しい」といった精神的な高揚などは幻想と見做されます。

彼はそのようなダーウィニズム的な考え方から脱することを語り、さらに幸せや生きがいを感じられる「意味ある生活」の条件は本来社会が供給するものだと主張しています。

 

彼の言葉を借りると、地域が衰退し、歴史や文化が失われていくことは「意味ある生活」の条件が失われることであると感じました。また現在日本が陥っている少子化という現象は「意味ある生活」の基盤である「生存」の再生産が行われていないということになるでしょう。

 

 

「日和佐 発心の会」では、そういった社会状況の処方箋となれるように地域づくり活動を行なっています。例えば、2021年2月にオープンした「Art Tourism Museum 373」の改修計画では、建物の外構に持ち主が管理する「コミュニティーガーデン」を設けました。

 

それによって近隣の景観・美観が向上し、さらに持ち主に地域を訪れた人との「出会い」や「会話」の機会を与えるという効果も果たしています。

ATM 歩道からの眺め

 

 

この計画によって「意味ある生活」を生み出す場を再配置することで、その意味をより高めていくことが可能なのではないかと感じました。

 

 

ちなみに『マルクス・ガブリエル 欲望の時代を哲学するⅠ.Ⅱ』のお値段は500円になります。立ち読みOKですので、お気軽に遊びに来てくださいね!

本棚

 

 

sites.google.com