『うみがめ×ロゲイニング』
2023年1月14日(土)10:00~14:00に美波町で「うみがめ×ロゲイニング」が初開催しました。ロゲイニングとは、地図とコンパスを使って多数設置されたチェックポイントを、できるだけ多く制限時間内に周り、得られた得点を争う野外スポーツです。オリエンテーリングに似ていますが、チェックポイントを回る順序は定められておらず、ポイントごとに異なる点数が設定されており、速さではなく総合点を争います。
開催のきっかけは、会員が小松島市で行われた「たぬき×ロゲイニング」に参加したことでした。もちろん、「ロゲイニング」という言葉すら聞いたことのない会員がほとんどでしたので「たぬき×ロゲイニング実行委員会」会長の笠井さんを美波町にお呼びしてノウハウを教わることから始めました。
笠井さんは「たぬき×ロゲイニング」の他にも「阿波を共に走る会」など、県内でスポーツを軸に様々な活動を行っている方です。
早速、笠井さんから教わったノウハウをもとに「うみがめ×ロゲイニング」の準備を開始しました。まずはチラシを制作し、参加者の募集を行いました。
参加チームは25チーム集まったので、その参加者に向けて大会プログラムをお送りしました。
ロゲイニングについて無知の状態でお申し込みをされた方も少なくないと思い、できる限り絵を多めにして、大会内容がイメージ的に伝わるようにしました。
大会当日は小雨が降る予報だったため、駐車スペースを大会会場の杉原跡地に集約してテントを一筆書きに配置して参加者ができるだけ雨に当たらずにチームのテントまで行けるように計画しました。
大会当日は準備段階では雨はかなり酷かったです。
ただ競技中は曇りの天気予想だったので、粛々と大会の準備を行いました。
予定通り10:00から資料配布・作戦タイムが行われ、10:10の出発と同時に雨が降り止み、安堵して参加者を見送ることができました。
競技では、日和佐地区にある海亀のオブジェや、建造物、飲食店をチェックポイントにして、チームで制限時間以内に得点の高い地点を効率よく回るルートを考えて徒歩やランニングで巡ります。
競技終了は14:00で、参加者は4時間かけて日和佐エリアを満遍なく回ります。
「美波町門前町再生交流オフィス」では、会員や「たぬき×ロゲイニング実行員会」のメンバー、町内外の有志の約10名で集計作業を行い、入賞者を決めます。
上位入賞者には、美波町の干物や燻製などの地域産品が贈られます。
ちなみに1位の「眉山ファイトクラブ」は200点満点中100点を獲得し、四国の道や南阿波サンライン・恵比須浜などのエリアを走り歩きまわられたそうです。
また大会後に行われた「地域産品試食会」では参加者に美波町のビールや干物をご試食いただき、美波町の食の魅力を知っていただきました。
[今後の展開]
「うみがめ×ロゲイニング」は、「かめっこ焼き販売イベント」や「日和佐ハロウィン」での方法を発展させた取り組みです。
↓「かめっこ焼き」販売イベントの記事
↓「日和佐ハロウィン」の記事
「発心の会」ではウィズコロナ・アフターコロナの新しいイベントのかたちとして、桜町通りに面した空き地を活用して、空き地から地域のお店や観光資源に人を流す仕組みのイベントを行ってきました。
そのような継続的な活動も少しづつ実り始め、「うみがめ×ロゲイニング」大会後は商店主から感謝のお言葉をたくさんいただきました。それは会員たちの地域づくり活動の動機に繋がっており、少しづつではありますが桜町通りが活性化する兆しが見えてきました。
来年度の開催に向けて、しっかりと反省を行いより良い大会となるように尽力して参りますのでこれからもご協力よろしくお願いいたします。
『日和佐ハロウィン2022』
今年は新型コロナウイルス感染を心配する住民の声もあり、桜町通りに面した「杉原跡地」をメイン会場としました。
また「杉原跡地」で人の流れが滞留しないように、桜町通りのお店には「ハロウィン協力店」となっていただき、それぞれの店主が考えた飾り付けやサービスで桜町通りにも賑わいや人の流れを生みだす取り組みも行いました。
メインステージの仮装コンテストでは申込者44組の個性的な仮装が披露されました。地道な広報活動の成果があってか例年の2倍以上の申込者でした。
[今後の展開]
「日和佐ハロウィン2022」は「発心の会」が3連休の初日に開催している「かめっこ焼き」販売イベントでの方法を発展させた取り組みです。どちらのイベントも桜町通りに面した空き地で開催しており、空き地から桜町通りのお店に人を流すための仕組みを設けています。
↓「かめっこ焼き」販売イベントの記事
「日和佐 発心の会」が発足した2015年から2022年の間、桜町通りでは9店舗のお店がオープンしました。
発足当初はお店がまだ少なかったということもあり、桜町通りの入口に出店者を配置し薬王寺前から桜町通りが賑わっているように見えることを重要視していました。
しかし新店舗も徐々に増えてきた今日においては、どうやって桜町通りのお店と連携してイベントを開催するかという考えにシフトしていくべきだと思います。
そういった意味で「日和佐ハロウィン2022」は桜町通りの新しいイベントの端緒となったのではないかと感じています。イベント関係者の方々は本当にお疲れ様でした。
情報発信のノウハウ
この記事では、徳島県美波町で地域づくりを行う「日和佐 発心の会」が編み出した情報発信のノウハウをまとめています。
「イベントを開催したい」「会社や団体の情報を知ってほしい」など集客の悩みを持っているなら、ぜひ参考にしてみてください。
【オンライン広告の活用】
最近では多くの人がインターネット(オンライン)で情報を収集するようになりました。そういったことからも集客を考える上でオンライン広告を無視することはできないでしょう。
有名なサイトになればなるほど広告掲載料金も高くなります。だけど、イベントの内容がおもしろかったり、広告のデザイン性が高かったりした場合は「掲載させてください」とお声がけいただけることもあります。
また、「あわカル」や「まいぷれ」・「イベントサーチ」などイベント情報を入力すれば無料で掲載してくれるオンライン広告もあります。
さらに、自治体によってはオンライン広告会社とパートナー契約を結んでいるということも少なくないので、自治体の職員と繋がりのある方は広告を掲載させてもらえないか相談に行ってみるのもいいでしょう。
[徳島のオンライン広告会社]
・徳島観光情報サイト阿波ナビ
・日刊あわわ
・情報とくしま
・なんとPlus
・あわカル
・まいぷれ
・イベントサーチ
【SNSの活用】
SNSでの集客方法を調べるとほぼ9割が「フォロワーの数を増やす」という内容にまとめられています。
だけど、この記事ではフォロワーが少なくてもできるSNSの活用方法をお伝えします。
それはフォロワーがたくさんいる人にお願いして、拡散してもらうことです。
具体的にいうとFacebookの場合だと、
に投稿した内容をシェアしてもらうわけです。
一度「イベントの出店者募集の投稿」をこれらのFacebookページにシェアしていただいた際には、出店の募集が2倍以上増えたということがありました。
SNSは無料でできる集客方法なので利用しない手はないです!!
また情報発信サイトの担当者はinstagramで情報収集をする場合が多いです。
なので、有名な情報発信サイトは相互フォローの関係になっておくといいと思います。
(instagramはビジュアルが重要視されるSNSなので、デザイン性のある広告を発信する必要があることもお忘れなく!)
【チラシ・ポスターの配り方】
大量に印刷したチラシやポスターをどこに配ったり貼りますか?
新聞折り込みだとお金もかかるし、若い人の目に届くか微妙。。。
そんなお悩みをお持ちの方にとっておきの方法があります!!!
公益性のある取り組みを若い層にも告知したい場合は、小中学校にもチラシやポスターを配ってみましょう。
[小中学校へのチラシ・ポスターの配り方]
1.チラシやポスターを配りたい小中学校の自治体(教育委員会)に連絡をして、配布したいチラシと各学校長宛の鏡文をお見せする。
2.許可が取れたら、教育委員会の窓口に行って配布したいチラシやポスターを各学校専用のロッカーに入れます。(自治体によっては配布できるサイズに指定があったりするので、サイズオーバーしてしまった場合は各学校に郵送か、直接配布しに行くことになるのでご注意。)
3.教育委員会の各学校専用のロッカーに担当の学校職員がチラシやポスターを取りに来て、鏡文の内容通りに学校に配布してくれます。
この方法の最大の利点は、SNSや新聞などのメディアでは情報が届きにくい小中学生に情報発信を行える点です。
さらに教育委員会の各学校専用のロッカーにチラシ・ポスターを入れておくだけでその自治体の小中学校全ての生徒に情報が行き渡るわけなので費用対効果も非常に高いです。
【オールドメディアの活用】
時は2022年。未だに言論の王様は新聞だし、「家にテレビがないなんてあり得ない」って人は少なくないでしょう。つまり、オールドメディアといってもその影響力は健在です。
また徳島にはシェア率70%で都道府県別のシェア率で全国3位の「徳島新聞」という、非常に発信力の高いオールドメディアがあります。
さらに大手新聞社も徳島県に支局を持っているので、ローカルな話題であっても取材に来ていただけることもあります。大手新聞社の強みとしてはローカルな内容であったとしても、yahooニュースやTwitterなどで全国的に情報が発信されることです。
新聞社は共同通信や新聞社宛に送られてきたプレスリリースを見て、取材する内容かを吟味して取材にやってきます。つまり取材してもらうためには、活動した成果の社会的な意義がしっかりと伝わるプレスリリースを作ることが重要になってきます。
また取材に来てもらうための配慮も大切です。
例えば「日和佐 発心の会」で開設した「Art Tourism Museum 373 」の取材をお願いした際には、開所式を行うことをプレスリリースに記載しました。
それによって記者が取材に行くための動機が生まれ、記事の内容にも新鮮さや膨らみが生まれます。
いくら魅力的な取り組みを行ったとしても、知ってもらえないことにはその本当の意味や価値も分からないままです。
誰でも自分のやったことを宣伝するというのは恥ずかしい部分はあるとは思いますが、新聞やテレビに取り上げともらうことは効果的な営業になるので活用しない手はないと思います。それに無料で取り上げてもらえるので。。。
【まとめ】
「日和佐 発心の会」の情報発信ノウハウをご紹介しました。
今日ではホームページの作成も無料で簡単にでき、SNSが全盛の時代です。簡単に情報発信ができるからこそ、自分が発信する情報がすぐに埋れてしまうこととも隣り合わせです。
だからこそ様々な情報発信の方法がある中で、どんな人に情報を見てもらいたいかを考え、最適の方法を選択することが一番大切だと思います。
『かめっこ焼き』販売イベント
『弱いつながり-検索ワードを探す旅』/東浩紀
本日は、「美波町門前町再生交流オフィス」の無人古本屋で販売中の『弱いつながり-検索ワードを探す旅』の紹介をします。
著者の東浩紀さんは、1971年東京生まれの哲学者・批評家で「株式会社ゲンロン」の創業者でもあります。近年は「合同会社シラス」でも活動を行なっています。東さんは大学などの教育機関には身を置かず、独自の方法によって哲学という分野でマネタイズを行っているという意味において先駆的な人物だと言えます。
本書ではインターネット社会における我々の生き方について警鐘を鳴らしています。
インターネット関連で「フィルターバブル」という言葉があります。それはインターネットの提供するアルゴリズムがユーザーの見たくない情報を遮断するという機能です。
つまり、インターネットの到来で個人が多様な情報にアクセスできたり、多様な人たちとの関わりを持つことができるというふうに思われがちですが、結果的には個人は「自分が見たいものしか見なくなっている」というわけです。
しかし、インターネット側に規定された世界でしかものを考えられないからといって、今日において我々はインターネットから離れて生活を行うことはできません。だとすれば、その統制から逃れる方法は「グーグルが予測できない言葉を検索すること」だと東さんは主張しています。
そのためには環境を意図的に変えて、現地での事物に触れて思いつくこと、欲望することそのものが変わる可能性に賭けることが重要だと述べています。この本ではこういった行動を「観光」と表現しています。
著者は大学院時代に「ジャック・デリダ」の研究を行っていたこともあり、
本書の内容を「観光によって主体をずらす」という試みだと捉えると、ポストモダン思想の影響を強く受けているんだなと感じました。また浮世離れした思想だと捉えられがちな「逃走」や「差延」といったポストモダン思想を「観光」という明快な言葉で現代に落とし込む技巧は流石です。
この本を読んで、「インターネット」は個人にオリジナリティーを生み出しにくくしている反面、その社会で成果を生み出すにはオリジナリティーが重要な要素であるという意味において、我々は非常に難しい時代に生きているんだと感じました。
本書では「観光」という言葉でその処方箋が提示されていますが、もう少し抽象的な言葉にすると「偶然性に身を委ねる」という提案をされているのだと思います。
ビジネスの世界でも偶然の力を活用することで、固有性を獲得するという考えがよく用いられます。
最も有名な事例は「ポストイット」開発の話しでしょう。
「ポストイット」はスリー・エムという企業が強力な接着剤の研究をしていた時に「よく付くけど、簡単に剥がれてしまう」接着剤が失敗作としてできてしまい、ある研究員が「この接着剤を、本に貼り付けるしおりで使えるのではないか」と閃いたことが製品化するきっかけでした。
このような「偶然の幸運を手に入れる力」のことをセレンディピティ(Serendipity)といいます。
「日和佐 発心の会」では地域にあるものを無条件に引き受けることで、その他の地域にはない固有性を生み出そうという方法をよく用います。例えば、我々の活動拠点である「美波町門前町再生交流オフィス」の入り口に設けた無人古本屋では、地域の廃材を利用して本棚を制作しました。
通常は完成品の設計をもとに材料を集めて本棚の制作を行うというプロセスを用いますが、我々は地域で手に入る廃材を手当たり次第に集めて、集まった廃材からどのような本棚がつくれるかを考えて制作をしました。
この計画では通常の制作プロセスを逆転させ意図的に偶然性を生じさせることで、固有の特色を持った本棚が制作できるのではないかと考えたわけです。
ちなみに『弱いつながり-検索ワードを探す旅』のお値段は500円になります。立ち読みOKですので、お気軽に遊びに来てくださいね!
「日和佐 発心の会」の活動について
【日和佐 発心の会】
徳島県海部郡美波町にある四国霊場23番札所・薬王寺の門前町は、大正期に桜が植えられたことに由来し、桜町通りと呼ばれています。
桜町通りはかつて遍路宿や飲食店が立ち並んでいましたが、過疎化や郊外店の進出で次第にお店が減っていきました。
そういった経緯から、2015年4月に桜町通りの活性化に取り組む「日和佐 発心の会」が設立しました。
メンバーは20代から60代までの男女21名で、美波町の地域住民がボランティアとして休日に集まって活動を行います。従来は、生活道路となっていて交通量の多い桜町通りに交通規制をかけて、新年の無病息災を祈願する薬王寺の初会式や毎年恒例の日和佐さくらまつりなどのイベントに合わせて、地元産品や手工芸品を販売する「手作り物の市」を開催し、地域コミュニティーの活性化を進めていました。
また移住者と空き店舗の所有者を仲介することにも積極的に関わり、カフェや宿泊施設の開業へと繋げていきました。「日和佐 発心の会」が発足した2015年から2020年の間、桜町通りでは7店舗のお店が新たにオープンしました。
そういった活動を通し、徐々に桜町通りを訪れる観光客が増え、地域に賑わいが生まれていきました。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響により桜町通りを訪れる観光客は減少し、毎年行なっていたイベントも中止しなければなりませんでした。
そんな中でも会員たちで積極的に話し合いを続け、
・コロナ禍という状況に対応しながら、地域の特徴を掘り起こし観光客や地域の人たちに新しい美波町の魅力を再発見してもらうために活動を行なっていくこと
・「日和佐 発心の会」としても収益を上げて、安定したまちづくり活動を行なっていくこと
という2つの方針で新たに活動を開始しました。
【コロナ禍における地域づくり活動】
- ウミガメマスクの商品開発計画(商品開発・地域の連携・魅力の再発見)
私たちが定期的に行なっている地域の魅力を探すためのまち歩きで、道の駅日和佐の包装紙として使われている町出身の挿絵画家「橋本シャーン」氏が描いたウミガメの絵を発見しました。
コロナ禍でマスクの着用が日常となっていたので、私たちは美波町のシンボルキャラクターでもあるウミガメの絵があしらわれたマスクの商品開発を考えました。「橋本シャーン」氏は2019年に亡くなられたので、まずは親族にウミガメの絵の使用許可を得ることからスタートしました。
使用許可を得てからは、桜町通りにある縫製工場とデザインの検討を重ね商品化しました。
製作したマスクは、薬王寺の厄除御祈祷をして「厄除け御祈祷済ウミガメマスク」として道の駅日和佐や日和佐ウミガメ博物館カレッタで販売しました。
販売当初から売れ行きは好調で、大きな収益源となりました。さらに、地域のお店や縫製工場、寺院と連携して商品価値を高めることは美波町の商品開発における好事例となりました。
桜町通りの入り口周辺に位置する元JAバンクATMの改修を行なって、地域の魅力を発信するギャラリー「Art Tourism Museum 373 」(通称:ATM)を制作しました。
電気工事以外はすべて会員の手作業で行い、ギャラリー内には地域を紹介する動画や地図、観光パンフレットコーナーを設けました。
この施設が完成したことによって、薬王寺の門前町でありながら参拝客の出入りが乏しいという桜町通りの問題が解決へと前進しました。また改修を行なったATMの隣に持ち主の花壇を整備し、その場所は地域コミュニティーを育む場所として機能しています。
「日和佐 発心の会」の活動拠点と、桜町通りの地域活性化のための施設として「美波町門前町再生交流オフィス」を開設しました。
このことにより地域での位置付けが明確になったとともに、建物の土間空間に地域の廃材で作った本棚を設置して地域に開放したライブラリースペースとしました。
2021年度からは桜町通りの入り口に位置するこの場所で電動バイクのレンタルサービスを開始しました。
それによって自然がコンパクトにまとまった地域の魅力を存分に味わうことができ、またコロナ禍であっても安心・安全に美波町を観光するための受け皿ともなっています。さらに薬王寺に偏りがちな観光客を薬王寺の門前町である桜町通りから、その他の観光資源に誘客する効果も期待できます。
4.今後の展望(ストリートファニチャー・店舗の改修・住民による地域づくり)
「日和佐 発心の会」では、今後も桜町通りの活性化を目指しながら地域づくり活動を行います。現在は桜町通りを訪れた人が、屋外で交流や飲食ができるようにお店の軒下などにストリートファニチャーを設置する計画を行っています。
ストリートファニチャーを設置することによって 屋外での飲食が可能となり感染症防止策に繋がり、地域の景観やコミュニティーの活性化の効果も期待できます。
また桜町通りの既存店舗や廃業した店舗の改修作業を行なうという話も出ており、実現に向けて準備を行なっています。これからも地域で生活する人の切実な問題意識や考えに寄り添い、一人一人のある程度やれることを掛け合わせて活動を行なっていこうと考えています。
『マルクス・ガブリエル 欲望の時代を哲学するⅠ.Ⅱ』/丸山俊一+NHK「欲望の時代の哲学」制作班
本日は、「美波町門前町再生交流オフィス」の無人古本屋で販売中の『マルクス・ガブリエル 欲望の時代を哲学するⅠ.Ⅱ』の紹介をします。
この本は、2018年から放送されたNHK番組「欲望の時代の哲学」を書籍化したものです。
著者の「マルクス・ガブリエル」は、1980年ドイツ生まれ。史上最年少(29歳)でボン大学の教授に就任した哲学者です。彼の著作『世界はなぜ存在しないのか』は世界中でベストセラーとなっており、いま世界が最も注目する哲学者です。
『一角獣は存在する。だが、世界は存在しない。』は彼の最も有名な言葉です。
非常に理解し難いですが、「存在」は「意味の場」(fields of sense )において現象するものであり、一角獣は空想・神話という「意味の場」において存在するが、すべてを包括する「世界」は存在しないという意味になります。
このテーゼが意味を持つのは、科学において無批判に「世界」(科学的世界観)が設定されることで、そこで位置付けられない存在が、存在しないこととされてしまう危険を回避できることにあります。
『マルクス・ガブリエル 欲望の時代を哲学するⅡ』では、「一角獣は存在する。だが、世界は存在しない。」という刺激的なテーゼを土台にして、我々の生きる社会の本来的な機能が提示されています。
私たちは、人間のありようには二つの側面があることを理解する必要があります。社会は、生存の再生産ーこれはアメリカ人による進化論的な社会理解ですーではなく、生活であり、生活とは一つの意味の形態のはずなのです。社会とは、単に生存や楽しみの条件を生み出すことではなく、意味ある生活の条件を生み出すことに関わるものです。(p.84)
例えば、物質・科学による一元的な社会の捉え方では食事は単なるタンパク質やカロリーの摂取と考えられ、人間の「美味しい」といった精神的な高揚などは幻想と見做されます。
彼はそのようなダーウィニズム的な考え方から脱することを語り、さらに幸せや生きがいを感じられる「意味ある生活」の条件は本来社会が供給するものだと主張しています。
彼の言葉を借りると、地域が衰退し、歴史や文化が失われていくことは「意味ある生活」の条件が失われることであると感じました。また現在日本が陥っている少子化という現象は「意味ある生活」の基盤である「生存」の再生産が行われていないということになるでしょう。
「日和佐 発心の会」では、そういった社会状況の処方箋となれるように地域づくり活動を行なっています。例えば、2021年2月にオープンした「Art Tourism Museum 373」の改修計画では、建物の外構に持ち主が管理する「コミュニティーガーデン」を設けました。
それによって近隣の景観・美観が向上し、さらに持ち主に地域を訪れた人との「出会い」や「会話」の機会を与えるという効果も果たしています。
この計画によって「意味ある生活」を生み出す場を再配置することで、その意味をより高めていくことが可能なのではないかと感じました。
ちなみに『マルクス・ガブリエル 欲望の時代を哲学するⅠ.Ⅱ』のお値段は500円になります。立ち読みOKですので、お気軽に遊びに来てくださいね!