『文学部の逆襲-人文知が紡ぎ出す「大きな物語」』/波頭亮
本日は、「美波町門前町再生交流オフィス」の無人古本屋で販売中の『文学部の逆襲-人文知が紡ぎ出す「大きな物語」』の紹介をします。
作者の波頭亮さんは愛媛県出身、東京大学経済学部を卒業後マッキンゼーを経て、経営コンサルタントとして独立された戦略系コンサルタントの第一人者です。
その経歴から意外に思われるかもしれませんが、本書では資本主義(新自由主義)に対して警鐘を鳴らしています。
著者によると、今日の日本(経済成長が止まった国)において「市場のメカニズム」の尊重のみで経済政策を行うと富裕層と貧困層の格差がどんどん拡大していき、貧困層が多数生まれ、そうした階層が固定化してしまい、
それによって、一部に集中した資本が政治やメディアを買収し、社会を構成する人々たちの手で国家のあり方を決定するはずの「民主主義」が機能不全に陥ってしまうとのことです。
波頭さんは資本主義と民主主義の危機を乗り越えるために重要なこととして、「テクノロジー」と「物語」という2つのキーワードを挙げています。
テクノロジーは人々の生活や生産行動において何ができるのかを物理的に規定するが、どのような世の中が望ましいか、どのような生活と人生を送りたいのか、何が善で何が悪かといった世の中のあり得べき姿を描き出すのが物語である。(p.142)
「文学部の逆襲」というタイトルには、資本主義と民主主義が機能不全となり、AI技術の浸透がますます加速していくこれからの時代において、「文学部」という人文領域こそが人類を次のステージに動かす主役となっていくだろうという予感が込められています。
この本を読んで、『大きな物語』は人々の感動や共感がもとになって初めて実現していくものだとすると、その実現の基盤には物語自体のクオリティーだけなく、それにひもづいた『小さな活動』の積み重ねが必要となってくると思いました。
そういった考えは地域づくりをするなかで形成されていきました。
例えば、その場所で生活する人に地域の今後のビジョンをぶつけたとしても、その方の考えている異なったビジョンと水掛け論になります。そういった実体験から、まずは自分の考える『大きな物語』に沿った『小さな活動』を行い、実際の現場を通じて共感を生み出していくしかないと考えています。
たとえば、「日和佐 発心の会」には薬王寺の参拝客を桜町通りやその他の観光資源に誘客するというビジョンがあります。
そのビジョンから、2021年2月には薬王寺前の元JAバンクの空き家を改修して桜町通りを紹介するためのギャラリー「Art Tourism Museum 373」(通称:ATM)を開設しました。
また、2021年4月からは桜町通りに訪れた観光客が広域の観光資源にスムーズにアクセスしていただけるように、桜町通りの入り口周辺で電動バイクのレンタル事業を開始しました。
そうやって小さな活動を継続的に起こしていくことで2022年3月には、桜町通りの住民たちで通りに飾り雛を設置する活動などが行われ、少しづつではありますが地域に我々が考えるビジョンが浸透してきたというふうに実感しています。
ちなみに『文学部の逆襲-人文知が紡ぎ出す「大きな物語」』のお値段は500円になります。立ち読みOKですので、お気軽に遊びに来てくださいね!
『かめっこ焼き』のレシピ・作り方
今日は、「日和佐 発心の会」で3連休の初日に桜町通りで販売を行っている『かめっこ焼き』のレシピ・作り方をご紹介します。
『かめっこ焼き』とは単純に言ってしまうと、亀の形をした「たい焼き」のことです。
しかし、たい焼きの起源を調べてみるとおもしろい事実が判明しました。
『たべもの起源事典』によるとたい焼きの起源は1909年創業の浪花家総本店の初代神戸清次郎が創作したこことされていて、
その経緯は、「今川焼きを始めたが一向に売れず、亀の形の亀焼きも失敗する。ところが、めでたいタイの姿にしたところ、飛ぶように売れた」と紹介されています。
つまり、美波町で「かめっこ焼き」が飛ぶように売れれば歴史的なリベンジを果たすことになるわけです。
「かめっこ焼き」の作り方
材料
[20個分]
材料A
- 小麦粉 170g
- 重曹 3g
- ベーキングパウダー 3g
- 砂糖 20g
- 塩 1g
材料B
- 牛乳 100ml
- 卵 1個
- サラダ油 10ml
- 水 70ml
材料C
- 餡子 100g
必要な道具
- かめ焼き器
- チャッキリ
- あんさし、あんべら
- ボウル 2つ
- 粉ふるい
- ホイッパー
- 泡立て器
- トング
- 計量器
- 計量カップ
- 紙袋
手順
1.材料Aを全てボールに入れ、ホイッパーか粉ふるいで攪拌します
2.材料Bを別のボールに入れてホイッパーで攪拌します。
3.材料Aのボールに材料Bを加え、泡立器で混ぜ合わせ、一晩生地を寝かせます。
4.一晩経ったらかめっこ焼き器を熱します。完全に温まるのに20分ほどかかります。
5.亀の甲羅の方の型枠にチャッキリで生地を流し込み、材料Cの餡子をあんさしで5gづつ入れていきます。
6.餡子を入れたらすぐに蓋をして、亀のお腹の方の型枠を1分30秒〜2分ほど加熱すれば焼き上がりです。
7.あとはトングで紙袋に入れて、3個入り200円で販売します。
POINT
- 生地をしっかりと寝かせる。
- 亀の手足にしっかりと生地を流し込む。
このレシピでおすすめのアイテム
たむらのタマゴ
地産地消を追求したあっさりとした甘みと旨味のある徳島県産の卵です。なんと主飼料には地元徳島産のお米を使っているという徹底したこだわり!
藤田道具のチャッキリ (細口タイプ)
かめっこ焼き器は形状が複雑になっているので、細口タイプのチャッキリで精密に生地の量を調整することがうまく作るためのポイントです。
最後までご覧いただきありがとうございます。
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まちづくり視察(高知)
高知県に視察に行ってきました。
視察のテーマは「文化の保存・活用」です。
まずは隈研吾さんの建物がたくさん建っていることで有名な檮原町に行きました。
梼原町にある「ゆすはら座」は高知県下唯一の木造芝居小屋であり、町内の戦後復興期の象徴的な施設です。町内のもみや松などの木材を使って、昭和23年に建設されました。
開館当初は映画や芝居・歌舞伎など娯楽の殿堂として地域で親しまれましたが、時代の変遷とともに利用率が低下。維持運営上の問題から一時は、町組において取壊しの決議がされました。しかし各方面からこれを惜しむ声が高まり、平成6年に町保護有形文化財に指定され、平成7年9月に修復移転されました。
檮原で数多くの建築を手掛けている隈研吾さんもこの運動に携わっており、「ゆすはら座」が自身の木造建築のルーツであるとのことです。
舞台の下手側には花道が取り付けられており、歌舞伎が上演されていた頃の臨場感が漂っています。現在は、神楽の上演や各種講演やまちづくりの会合等に活用されているとのことです。
「ゆすはら座」と隈研吾さん設計の建物を見学した後は、四国の最南端土佐清水市にある「海のギャラリー」へ行きました。
林雅子さんの設計で1966年に竣工した小さな貝殻展示施設です。外観は切り妻屋根の建物ですが、左右対象の片流れの折板屋根が自立して空間をつくっています。
建物内のパンフレットには「海のギャラリー」の類似例として原広司の自邸や清家清の九州工業大学記念講堂が紹介されていたが、個人的にはルイス・カーンの「キンベル美術館」が頭に浮かびました。(カーンにはキンベル美術館をアーチ構造だとずっと思い込んでいたという逸話がある)
写真でも分かる通りとても魅力的な建物なのですが、2000年頃には運営難と老朽化で施設の存続が危ぶまれる事態となりました。林雅子さんが亡くなった2001年、「海のギャラリー」を訪れた夫の林昌二さんはその状況にショックを受け、2002年に保存再生を目指して「海のギャラリーを生かす会」を発足し、募金活動や保存のための署名運動を行いました。
その結果、土佐清水市も財源確保に動いて2004年に市議会で再建が決定し、「林昌二と海ギャラの仲間たち」による改修設計・監理を行い、2005年にリニューアルオープンに至っています。その後も、2019年に登録有形文化財に登録されました。登録を契機に、約15年ぶりの部分補修・改修が行われました。
建物の構造が展示にうまく反映されている感動的な空間です。ただ年間の来場入場者数が約4000人余りということを考えると建築目的以外の来場者をどう増やしていくかが今後の課題なのだろうと感じました。
次は宿毛の芳奈の泊屋へ行きました。
泊屋は別名「やぐら」とも言われ、戦国時代に見張りとして建てられたのが起源とされています。そのため集落の入り口か中央の見晴らしの良い場所に建てられていました。
幕末以後は集落の警備以外にも、若い男の夜鍋や社交の場として利用されていましたが、明治末年頃より夜学が盛んとなって、床の低い公会堂として改修されたり、風紀を乱すという理由で次々と取り壊されていきました。わずかに残った芳奈の泊屋は昔の若衆組の研究資料として県の文化財の指定を受けて保護されています。ちなみに建物の下に見える大きな石は若衆達が力比べの遊びに使った力石(ちからいし)と呼ばれるものです。
屋根は切妻造りの杉皮葺きで、内部は畳6畳敷きです。地盤から床までは約2100mmくらいの高さですが、室内は立つと頭がぶつかる秘密基地のような建物でした。文化財として保存されていることは素晴らしいと感じた一方で、こういった場所が人々の日常(非日常)的な居場所として、活用されていくとよりおもしろいなと感じました。
ちなみに山奈町芳奈地区には4つの泊屋があります。
最後は前原掩体群へ行きました。掩体は旧高知海軍空港隊所属の飛行機を攻撃から守るための格納機です。昭和16年〜20年の終戦直前まで飛行場からの誘導線に沿って鉄筋コンクリートのものが9基、木や土、竹でいくつか造られました。現在は鉄筋コンクリートのものが7基残っています。ここは飛行予科練習生卒業生のうち、偵察搭乗員の実技教育をする飛行術偵察専修練習生の本科の練習航空隊でした。その練習機が通称「白菊」であり、昭和20年から「神風特別攻撃隊菊水部隊白菊隊」として沖縄へ悲劇の出撃を果たします。
5号掩体は、貴重な戦争遺跡として、将来にわたり保存し、平和教育の教材として活用するという基本方針が定められ、掩体の戦争遺跡としての価値を損ねないように補修・補強が行われました。
平成31年に文化財の「保存」に力を入れていた文化財保護法が改正され、文化財の「保存と活用」という新たな視点が盛り込まれました。それによって、文化を保存するだけでなく、今まで以上に活用できるようにし、そこで得た利益を維持・管理に回すということに注目が集まっています。
活用という視点で考えると、今回視察を行った「泊屋」や「掩体」には大きな可能性を感じました。その理由としては、それらが群として地域一帯に存在しているからです。一つの地域にある複数の文化財は地域が生まれた当初からそれぞれが相互に繋がったものであると思います。だからこそ、それらの文化財を活用し相互に結びつけていくことでその地域がもつ歴史を浮き彫りにし、観光客はそのストーリを体験することで地域全体を理解できます。
美波町にも「大浜海岸」や「あわえ」といった地域一帯となった文化財があり、今後はそういった固有の資源をどのように活用するかということが重要だと感じました。
無人古本屋プロジェクト
「美波町門前町再生交流オフィス」 は桜町通りで地域づくりを行う人たちのために開かれた施設です。
当初は「日和佐 発心の会」の活動拠点としてしか使われていない感じだったので、桜町通りに面した建物の土間空間を、少しでも地域住民や観光客に対して開かれた場所にしたいと思い、入り口の土間空間を古本屋にするプロジェクトを開始しました。
まずは看板と垂木で下地を作り、その下地に長物の廃材を金物で固定し、地域の人たちから頂いた廃材が標本のように展示されている印象の本棚を作りました。
ちなみに本は地域の関係者たちが読み終えたものいただいて設置しました。
本の購入方法は、東京にある無人本屋「BOOK ROUND」のやり方を参考にしました。
本の値段は500円・1000円の2種類で、本を買いたい人は本に貼ってある値札を見て、その値段に対応したガチャガチャにお金を入れてます。ガチャガチャからは袋の入ったカプセルが出てくるので、その袋に本を入れて購入完了という仕組みです。
ちなみに「ガチャガチャ置き」はいらなくなった縁台2つを組み合わせて制作しました。
近年、桜町通りでは移住者による空き家を活用したお店が数多くでき、観光客が立ち寄るきっかけが生まれました。
しかし、桜町通りにあるお店の多くは飲食店であり、目的の飲食店に行って美波町を後にするという観光客も多いです。そのため、これからはそれぞれの店舗をより密接に結びつけて、人の動き活性化していく必要があります。 無人本屋プロジェクトを通じて、観光客や地域住民に開かれ、飲食店でご飯を食べ終わった人が、古本屋で寛いだり、コーヒーショップや公園で本を読んだりといった膨らみを持った活動が生まれていけばと考えています。
「ミナミまちめぐり」を通じて
2021年4月から「日和佐 発心の会」が中心となって桜町通りの入り口周辺に位置する美波町門前町再生交流オフィスで電動バイク「BLAZE SMART EV」のレンタルサービスを開始しました。
電動バイクレンタル事業の目的は、薬王寺に集中しがちな観光客を町内のその他の観光資源に誘客すること。そして、コロナウイルスの世界的な蔓延に伴い観光客に密を避けながら美波町を楽しんでもらうことです。
「BLAZE SMART EV」は電気を動力として走行する原動機付自転車で、最高速度は30km/h・航続距離は30kmです。
貸し出し台数は3台で、料金は1台1時間あたり2,000円(インスタグラム投稿で1台あたり500円引き)・平日乗り放題2台5,000円、3台4,000円です。
またレンタル利用者には、電動バイク専用地図・自撮り棒・バブルカメラの無料貸し出しを行っています。電動バイク専用地図は、大浜海岸沿いを巡る[かめたろうコース]、南阿波サンラインを巡る[かめじろうコース]、桜町通り周辺の飲食店や日和佐うみがめ博物館カレッタを巡る[かめこコース]の3種類用意しており、利用者は地図を参考にしながら自由に美波町を観光します。
利用人数は2021年4月8日〜2022年3月31日の期間で約100名でした。
またメディア掲載実績としてはテレビ出演6回、ラジオ出演3回、新聞掲載6回、広報・雑誌・ネット記事掲載14回と多くの方に事業を知っていただきました。
約1年間の実証実験を通じて、電動バイクレンタル事業の3つの課題が浮かび上がりました。
[課題1]
1つ目の課題は気候の影響を受けやすいということです。
電動バイクを乗るうえでの魅力として「風や自然を感じる爽快感」が挙げられる反面、気候によって利用者数の変動が生まれやすいという課題があります。そのため、12月〜2月の寒冷期は利用者数が他の月と比べると非常に少ないです。また「BLAZE SMART EV」には防水機能がないため雨天の場合は休業となり、悪天が続いた8月の利用者数はわずか3組でした。
雨天での営業方法については打つ手がなかったですが、寒冷期に関してはインスタグラムのフォロワー数1,000以上の方に無料で電動バイクに乗っていただきSNSで発信してもらう「インスタグラマーキャンペン」を行いました。そのキャンペーンでは5組の参加者があり、結果的にその参加者の投稿で電動バイクのレンタル事業を知ったというお客さんも現れました。
一般の利用者の約6割がインスタグラムを通じてサービスを知ったということを踏まえると、閑散期は発信に集中した営業形態に切り替えるということも有効な手段の一つであると思います。
[課題2]
2つ目の課題点は運転免許が必要ということです。
「BLAZE SMART EV」の車両区分は原動機付自転車なので、運転するためには普通免許(原動機付自転車免許、普通自動二輪車免許、普通免許など)が必要です。
そのため子連れの観光客の場合は電動バイクの利用が困難です。
美波町の「薬王寺」や「日和佐うみがめ博物館カレッタ」では子連れの観光客をよく見かけるため、子供・家族向けにモビリティ事業を展開することの重要性は高いと考えます。
例えば、兵庫県城崎温泉の「株式会社たびぞう」では運転手1名で3人乗りの電動モビリティ「VEHICLEFUN ETT-BK」のレンタルサービスを行っています。このモビリティであれば子連れだけではなく、乗り物の運転が困難な高齢者や障害者連れの観光客の受け皿になることも期待できます。
このように今後新たな電動モビリティを導入することで、モビリティを利用した観光の敷居を下げるということも可能性としてあると思います。
[課題3]
3つ目の課題点は採算です。
2021年度の電動バイクレンタル事業の売り上げから保険料や修理代を差し引いた金額を考えると思うような利益は出なかったです。
近年地域におけるモビリティの重要性が高まる一方で、収益が出ないことにはサービスの継続性は見込めないという課題があります。そのことから来年度のレンタル事業では利用料金は変更せずに、利用可能時間を増やすことで、2021年度より高い売り上げとなることを目指して事業を行う予定です。
また昨年度の12月からは電動バイクの鍵を地元の飲食店に見せると特典が受けられるサービスを開始したので、電動バイクの利用時間が増えることは地元のお店にお金が落ちることに繋がると予想もできます。
[電動モビリティの新たなる動き]
2022年3月4日に最高時速20キロ以下の電動キックボードについて、16歳以上は免許なしで運転できる道路交通法改正案が閣議決定しました。
国会で成立すれば、新たなルールは2024年夏までに適用される見通しです。
最高速度は20キロ以下と低速ですが、桜町通りや日和佐浦周辺のエリアを巡るためのツールとしては大いに可能性があると思います。また運転免許書が不要なため、公共交通手段の乏しい地域における高齢者や足の不自由な方に対する移動手段の提供というメリットもあります。
[まとめ]
本事業を行っていくなかで気づいたことは電動モビリティという新しい技術を取り入れるだけでは移動需要は生まれないということです。
地域の活性化を考えるうえで移動需要の創出は切っては切り離せません。
しかし、交通は目的があってはじめて成立します。つまり、移動と観光資源をどのようなストーリーとして提供するかが重要な課題であると思います。
来年度も美波町の地域資源を生かしながら、モビリティを「どのように利用するか」という眼差しや考える場を大切にし、新しい実践を行っていこうと思います。
ATM改修編(後編)
元JAバンクATMの防水工事や電気工事を終え、どういった建物に改修するかを「日和佐 発心の会」の会員で話し合って方針を決めていきました。
ATM改修の目的は薬王寺周辺に地域のお店を紹介するギャラリーを設けることで薬王寺の参拝客を桜町通りに誘導することなので、
・地域を映像で紹介する映像コーナー
・地域を地図で紹介するマップコーナー
・地域のパンフレットを設置するパンフレットコーナー
の3つのコーナーを設けることにしました。
さらに建物周辺の人の流れや、薬王寺温泉との位置関係を考えてそれぞれのコーナーが
どのように配置されると人を内部に誘い込みやすいかを考えました。
計画としては新設の壁で入れ子状の展示空間をつくり、建物内部に入ると3つのコーナーが連続的に繋がった展示に囲われるというものです。
改修の方針が決まったので、実際に作業を開始しました。
まずは壁の下地を設置して、壁の取り付け作業を行いました。
次に壁の塗装作業に取り掛かりましたが、全く綺麗には仕上がらなかったためご実家が建材屋の観光協会の徳永さん(かめたろう)にご指導をいただきました。
写真は徳永さんに粉パテの使い方を教わっているところで、粉パテで壁の凹凸を消した後はペイントローラーで塗料を塗っていきました。
徳永さんのおかげで綺麗に塗装をすることができました。
次にカッティングシートでマップを作ったり、パンフレット置き場を作りました。
内装作業を終えた後は、季節によって表情が変わる場所を目指して外構計画を行なっていきました。
ATMの持ち主はガーデニングが趣味なので倉庫のまわりに御影石を設置して持ち主の花壇のスペースを設けました。
角のない楕円形の輪郭に石を並べることで、持ち主が躓かないようにしました
花壇を設置した後は持ち主のおかげであっという間に花が咲き誇っていて、さらに花壇と歩道の間にかかっていたチェーンも外していただきました。このように自分のものを開くという活動が積極的に行われると地域がよりおもしろくなるんだと感じました。
こうやって4ヶ月に及ぶ作業がようやく終わり、2021年2月11日に開所式を行い正式にATMがオープンしました。
ちなみに建物の名称は元JAバンクのATMだったことから、「Art Tourism Museum 373」(通称:ATM)に決まりました。
オープンしてからは地域の人たちの要望や意見を反映させていくことで、より地域から愛される施設になるように日々建物の設えを更新しています。
ATM改修編 (前編)
元JAバンクATMを正式にお借りすることが決まり、まずは整地作業をして倉庫の設置を行いました。
会員たちで休日に集まって作業を行いました。
倉庫の前には単管で骨組みを組んで看板を設置しました。
これはロバート・ヴェンチューリの「装飾された小屋」という手法を参考にして考案しました。
看板はコーナンPRO南小松島店で購入した「アルミ複合板パンチング」を使用して、軽い印象にしました。
次にATMの改修作業です。
まずは内部のボードと軽鉄下地の撤去を行いました。
ここで問題が発覚…
壁からも天井からも雨が漏っていました(笑)
我々には防水のノウハウが全くなかったので、地域で防水関係のお仕事をしている「ナカバリコート」にお話を伺いにいきました。ナカバリコートには快く防水のノウハウを教えていただき、「地域のためなら」ということで防水塗料までいただきました。
ナカバリコートから教わったノウハウをもとに、はじめに既存防水の撤去作業を行いました。
既存の防水を全て撤去し、次に防水作業を行いました。
こちらは壁の防水作業です。
写真はマスキングテープで養生した後にコーキングガンでパネルの目地を詰めている様子です。目地を詰め終わった後はヘラ(我々はスプーンを使用)でならして、すぐにマスキングテープを剥がしてシールが硬化するのを待ちます。
こちらの写真は屋根の防水作業の様子です。
もともとは「シート防水」だったのですが、新規の屋根防水は素人でも簡単に作業を行える「塗膜防水」で行いました。
防水工事を終えて、雨水の侵入が完全にシャットダウンされたのを確認した後は、内部の鉄骨のサビや汚れを落として塗装作業を行いました。
次に地域の電気設備会社に電気工事をお願いしました。
昔はATMなだけあって電気工事はスムーズに進み、内装作業と外構作業が開始しました。